服づくりの分業をデザインする。

日本の縫製業はガラパゴスだ。

 

 

その大きな要因はものづくりの日本と言われた時代の成功体験から抜け出せず、

業界を革新せず、

その場しのぎで不足したリソースを補ってきたことが原因だ、

例えば、

新規のアパレルメーカーとの付き合いをせず、新規の開拓は「振り屋さん」に任せ、その結果営業力は必要なくFAXだけでビジネスが成立していたり、

例えば、

職人を目指す若い人たちが不足すれば海外から安い金額で研修生を入れて労働させたり。

そしてその中でも日本の縫製業の「分業制」はかなり深刻で、

新規の若いアパレルメーカーが服づくりをする時のハードルにもなるし、

数十年前から変わらない分業体制は動かすだけでコストが無駄にかかり、

その上効率が悪い蒸気機関車のような状態だ、

縫製の分業を羅列するとかなりややこしくなるので簡単に説明すると

営業(振り屋)

資材管理(振り屋と工場)

裁断屋(裁断専用)

前段取り(穴かがり屋さん)

部分作り(内職さん)

組み立て(縫製工場)

ボタンホール、ルイスなどの加工(穴かがり屋さん)

検品(検品工場)

仕上げ(プレス工場)

こんな感じになっている。

各々の役割が専門性を持ってプロフェッショナルとして仕事をしているのでクオリティは素晴らしく、

例えば裁断屋さんは早く綺麗に裁断してくれるし、

特殊加工屋さん(穴かがり屋さん)などは一般には出回っていないスナップボタンに対応していたり、

仕上げ屋さんは洋服に完璧にお化粧してくれる。

確かに素晴らしいプロフェッショナル集団であるし、

1つの会社が全てそれを同レベルで行うのはとてもとても難しいだろう。

縫製工場にとっては自社で抱えることができないリソースを補ってくれる女房役だったのだ。

しかし、

時代は変わってしまったのだ、

数十年前まではそれでよかった、

なぜなら1型あたりの枚数が爆発的に多かったからだ、

プレス屋さんは1着150円でアイロンしてくれて1000枚あったら3〜4人で回して1日15万円になるから商売できたし、

穴かがりも1穴20円でボタンホールが8個のシャツを1000着回したら16万円だ、

だけど今の日本にそんな仕事はほぼ残っていない、

ロット数は減っていき大手メーカーでも50着を切る枚数しか作らないものもざらにある。

もちろん1着あたりの価格は小ロットになるので上がるのだが数倍にするのは難しいだろう。

例えばプレス屋さんが50着だから300円(2倍)の価格にしたとしても15000円、収益は1/10になるので同じ売上を上げるために10型受けないといけなくなる、3〜4人で50着を10型回すのはほぼ不可能だ、

もちろん想像に難しくないのだが、

同じものを1000枚するのと、10型回すのとでは難易度が違うし効率も違う、リスクも高くなるだろうし、必要な設備も違い効率は悪くなる。

そしてどうなったか、

40年間で繊維業界に関わる工場は1/3以下になってしまった。

他にもたくさんの要因はあるのだろうが、

海外では昔の日本のように安い人件費で大きな工場でガシガシと服を作っていく、

しかも何十年前と違いより最新の機械がはいり価格が安くなっている、

そんな状態なのに今の日本では成功体験があった時代のままの分業体制を変えず、

なんとか残っている2.4%の日本製の洋服を取り合って製造しているのだ。

僕は今の時代に「工場」は多く必要ないと思っている。

工場を維持するにはコストがめちゃくちゃかかる、

雇用すると人件費の他に採用や社会保険など何倍もコストはかかるし、

水道光熱費も無駄に多くかかる、広いスペースが必要だろうから家賃も高い、

ご家庭の事情でご結婚や出産などを加味し余分にスタッフを抱えておく必要もあるし、福利厚生費もかかる。

しかも単月の売上だけでなく、売上を取り続けなければいけない。

10人くらいの工場で300万/月の売上をあげて1人20万円、社長が50万円、残りは経費みたいな典型的な工場モデルは成立しなくなってきているのだ。

(そもそもそんな効率のいい仕事はあまり残っていない)

だから僕は日本の分業をデザインし直すべきだと考えている、

 

今までの分業は「縫製工場」で行われる「縫う」作業を内製化させて、

それ以外に必要な「裁断」や「穴かがり」は外注に出す、という仕組みだった、

圧倒的に縫う作業が加工賃の取り分が一番高く、効率よく回すと一番利益が残ったからである。

例えば4000円が加工賃のワンピースがあるとする、

今までだと

裁断@150円、

縫製@3500、

穴かがり@200、

仕上げ@150、

こんな割り振りだったはずだ、しかし現在は

裁断@400

縫製 @2900

穴かがり@400

仕上げ@300

こんな利益構造になっているはずだ、

つまり縫製工場が「縫う」ことで得られる利益は以前に比べて3500円→2900円で20%近く減っている、

分業された裁断や穴かがりなどは小ロットになったため「小ロットフィー」を取ることができる、

だが縫製部分においては小ロットフィーを取るどころか20%収益が減っているのだ、

そして人件費は上がっていく。。。

つまり従来アウトソースした方がいい。

とされていた部分こそ現在は「内製化」させるべきなのだ。

 

そして幸いなことに縫製部分に関しては「ミシン」と「ロックミシン」と「アイロン」があれば成立することが多く、

従来スペースが必要と思われてきたものが「自宅」でもできるのである。

つまり縫製部分はアウトソースできる。

自宅を小さな縫製工場として扱うことで工場が抱えていた無駄な経費「社会保険会社負担分」だとか「大規模の水道光熱費」だったり、「家賃」だったりと削減することができるし、

縫っている職人さんたちの手取りは変わらないし、

職人さんたちは「自宅で好きな時間に仕事ができる」という自由も手にすることができるのだ。

この仕組みを具現化したのが弊社合同会社ヴァレイのサービス

My Home Atelier

である。

現在弊社のMy Home Atelierには数百人の方が登録していただいており、

子育て中のママさんや、

昔工場をされていた80歳の職人さんや、

クリーニングの取次店をされている方の副業や、

近くに縫製工場がないが縫製がやりたいという職人さんなど、

様々な年齢の様々なステージの方にご利用いただいている。

そして同時に「小ロットで高品質な服を作りたい」というデザイナーさんや、

クラウドファンディングの受注生産アイテムや、

着物のリメイクや、

コレクションブランドアイテムなどこちらもたくさんのお客様にご利用いただいている。

僕はITベンチャーの会社の社長ではなく、

縫製工場の社長である。

うちの会社はあくまでも「ものづくり企業」である。

どれだけプラットフォームが整っても、ITが充実しても

現在のところはまだミシンが動かないと服は出来上がらない。

だから変えるべきは仕組みだと確信している。

仕組みを変えれば服づくりはもっと自由になる。

だって、

もうすでに技術を持った職人さんはたくさんいて、

小ロットから服を作りたい人たちもたくさんいて、

うちの会社が自宅ではできないこと全部やれるんだから。

僕たちと一緒に服づくりしませんか?

My Home Atelierの職人さんを募集してます。

同時に、

こんな仕組みの僕たちに大切な服づくりを任せてくれるデザイナーさん、

メーカーさんたちも募集してます。

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