アナログとデジタルが出会うところ

僕は服づくりをしている。

正確に言うと服づくりをしている人たちを応援している。

僕が経営している合同会社ヴァレイでは「日本の縫製業を次世代につなぐ」と言うビジョンを元にMy Home Atelierと言う仕組みの運営をしている。

この仕組みを簡単に説明すると、

昨今進む廃業や結婚、親の介護など様々な理由により「縫うこと」を生業とできなくなった職人さんたちが自宅で縫製できるよう、裁断やまとめ(内職作業など)を弊社で代行で行い、

同時に1人でできる仕事量=小ロット生産が必要なデザイナーなどとのマッチングを行っている。

こうすることで小ロット生産をしたいデザイナー達には「作る自由」を、

職人達には「縫う自由」を提供し、結果として縫製が文化になり次世代に繋がれていけば。

そんなことを考えてこのサービスを行なっている。

行なっている事業が「縫製屋さんっぽくない」と言うことでいわゆる「縫製ベンチャー」として紹介していただいたり、プラットフォーム事業のように紹介されることが多い。

だけど僕たちが目指すのは

「アナログとデジタルの間に生まれるギャップを埋めるコミュニケーション構築」

である。

僕が一人で仕事を始めた時、最初にしていたのはプログラミングでもデザインでもなく「拡大コピー」である。

いささかアナログである。

だが、縫製における仕様書はメーカーやブランドにより様々である、そしてその書式はおそらく数十年前と変わらず「わかりにくい」のである。

そして書式がそのままということは「文字が小さい」のである。

文字が小さくてわかりづらいはどういう問題があるかというと、

職人の多くが高齢化しているので文字が見えない。

である、

服づくりをする職人が読めないのであるから、出来上がってくる洋服は完璧にならない。

だけどデザイナー達は上がってきた洋服を見てこう言う。

「仕様書にちゃんと書いてあるんですけど」

書いている、

確かに書いている。

ただ、小さくて、見えない。

30代のあなた達には見えるかもしれないが、

70代でしかもファックスで流れてきた仕様書が見えるわけがないのだ。

だから僕が最初にやったのは「拡大コピー」である。

仕様書をできるだけ大きく拡大コピーして、小さい文字やわかりにくいところはマーカーで線を引いて口頭でも注意した。

そうすることでミスは激減したし、上がってくる洋服のクオリティは飛躍的に上がった。

縫製は「技術」と言う言葉で片付けられがちなのだが、

実はその前に「コミュニケーション」が欠落していないかをしっかり確認するべきなのだ。

これは縫製だけの話ではなく多くの問題が「コミュニケーションギャップ」によって生まれていると思っている。

そしてコミュニケーションギャップの多くは「相手の気持ち」を考えれば埋められるものなのだ。

だから弊社のDMや営業の封筒は「布」で作っている。

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なぜか?

答えは簡単だ、

職人であれ、デザイナーであれ、

服づくりをする人たちは「布が好き」である可能性が高いからだ。

布が好きな人が毎日ポストを開ける、そこに布で作られた封筒があれば開けるでしょ?それだけだ。

それだけなのだが、

僕は達はこの封筒のアナログさがとても重要だと思っているし、

しっかりと心に届いていると思っている。

「相手の気持ちに立って考える」

それが重要なのだ。

これからの仕事はデジタルで、AIでITだ。

だからこそ、アナログが貴重になり活躍する。

そして服づくりにおいて多くは人の手で行われているわけだ、

だからこそ「どれだけの領域をデジタルにするか」ではなくむしろ

「どれだけの領域をアナログで残すか」

が今後のカギになると僕は考えているし、

おそらく間違い無いと思っている。

そしてアナログは重要なコミュニケーションツールであるし、

コミュニケーションは「優しさ」であるから、

アナログ領域は「真似ができない」のである。

そして真似ができないことはビジネスにおいてとても強いものである。

だから僕たちの会社は「優しい会社」でありたいと思っている。

これからファッションの業界に入ってくる、もしくはすでにいる人で、

「うまくいかない」と思う人たちがいるとすると、

今一度「自分のアナログは足りているか」を考えてみるといいかもしれない。

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